ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

担がれて、担ぐ(ss)

藤堂様からいただいたリク「おんぶ」についての小話です。藤堂様、いつもありがとうございます。



川を見るなり飛段はコートと武器を岸に残し、ウヒョーと奇声を上げながらバシャバシャと水へ入っていった。相棒との歳の差を感じるのはまさにこういう時である。川なんぞ珍しくもないし濡れた後の始末も面倒だろうに、多分こいつはそんなことを考えずに動くのだ。付き合いきれないが、先を急ぐわけでもないので日陰に腰を落ち着けて今後の旅程を確認している俺を、相棒がやけに嬉しそうに呼ぶ。卒寿を超えた人間に川遊びを勧めるあれは頭がおかしいに違いない。知らんふりをしていると相棒は諦めたようだったが、そのうち川の中ほどから先とは違った声音が聞こえてきた。角都よー、水ん中でなんかキラキラしてっけど、ありゃ何だよ?きらきら、という言葉に俺は反応する。このあたりに金山に関する話はなかったと記憶するが、もしや砂金か、それとも忍の道に近いこの場所に埋蔵された金目の物かもしれない。気にはなるが濡れることも面倒臭く、遠くから水を睨む俺に、ザバザバと岸まで戻ってきた相棒が、そんなに気になるんならおぶってってやろうか、と提案してきた。思えばそんな案に乗った俺がバカだったのだ。相棒はいそいそと俺を背負うと水に踏み込んでいき、川のまん中で立ち止まると、笑みを含んだ声であれーどこだったっけかなァと抜かしたのだった。遅まきながら騙されたことを悟った俺は自分の足で戻るべく相棒の背から降りようとしたが、奴は頑固に俺の足を離さなかった。その結果がこれだ。お前は俺が殺してやる、と本気でわめく俺に向かって相棒は、それをオレに言うかよ、つーかテメーのせいで片足折れたぜとまったく悪びれない。しかたなく、全身ずっくりと濡れた俺は(コートを着ていなかっただけ俺よりダメージが少ないはずの)濡れた生き物をおぶって岸まで移動する。服を干し体を拭いて尊厳を取り戻し、宣言通り相棒を殺すために。