ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

2011-11-01から1ヶ月間の記事一覧

対抗意識(ss)

ss

茶屋の店先の縁台で餅をかじりながら、飛段は道向こうの別の茶屋にいる忍びを眺めている。大柄な若い女で、色気のない中忍装束を身に着けているがなかなかの美人だ。隣に座るネコ科の動物は使役獣なのだろう、黒い毛皮の中で目だけを光らせている。女もじっ…

常に新鮮(ss)

ss

飛段の記憶力は粗末だ。旅の目的地や人の名はもちろん、忍者としての常識である印の種類や性質変化の優劣関係などですら何度聞いても覚えられず、そのたびに相棒の角都を頼り、聞いたことをまたすぐに忘れる。性質って五つもあるじゃねーか、じゃんけんみた…

初めから終わりまでなんだかもうだめな武人(ss)

ss

いやがる相棒の尿道と直腸をしつこく探り、何度も体液を絞り出させた。痛みを悦ぶ飛段だがいつまでもいじられることは苦手らしく、本気でいやがっているようだった。こちらの体を押しのけても細く太く伸びる地怨虞から逃れることは難しい。体に地怨虞の侵入…

親切な下心(ss)

ss

ぬかるんだ道で角都のサンダルの片方がいかれた。べちゃべちゃの泥の中に片足立ちして角都はサンダルを修理しようとするが、手こずっている。水牛の群れをつれた農民がしょっちゅう通る道で、ぬかるみからは豊かなクソの香りがしている。オレはおもしろがっ…

レス(memo)

11/20にコメントをくださった方へ。ありがとうございました。 こあん様 「やむを得ず」愛の日々を送った角都はその感想をけっして口にしないでしょうから、飛段は自分一人だけがラッキーだったと思うのでしょうね。自分が夫として妻の角都を可愛がりたかった…

ご馳走はたまに食べるからおいしい(ss)

ss

角都とオレである里の大名夫婦を片付けた。依頼主は夫婦の娘だ。これで仕事は終わりだったのだが、依頼主が「二人が生きているように偽装してほしい」と追加の依頼をしてきたのでオレたちは殺した夫婦に扮して一週間ほどその里にとどまることになった。役割…

レス(memo)

11/14にコメントをくださった方へ。ありがとうございました。 杏路様 当方が暑苦しく残したコメントにご丁寧なご返信をありがとうございますm(__)m杏路様のお話を読むたびに「ああこの方は苦も無く書かれるのだろうなあ!」としきりに羨んでおりました。私は…

スープ(ss)

ss

一週間ほど留守にしていた相棒が、帰ってきて風呂に入るなり俺のことを呼びつけてケチだケチだと責め立てる。テメー湯を替えてねーな、とぼけたってバレバレだぜ、見ろ、このちぢれっ毛はオレんだろ、まだ風呂入ってねーうちにこんな毛が浮いてるってことは…

茶席(ss)

ss

強奪してきた荷の中に茶道具一式を見つけた角都は、ふと興味がわいて茶の真似事をしてみることにし、殺風景な隠れ家の一室に毛氈を敷き茶釜に湯を沸かすといっぱしの粋人気取りで茶をたててみた。毛氈の上にしゃがんでそれを眺めていた飛段もお相伴にあずか…

蚊と対等(ss)

ss

今日も相棒のバイトにつきあわされてくたくたになり、たどりついた宿の布団にやっともぐりこんだら、プーンという羽音がオレの眠りの邪魔をする。もう十一月、セミもアブも見なくなって久しいのになんで一番厄介な蚊のヤローが生き残っているんだろう。こん…

二つの月(ss)

ss

相棒がうさんくさいほど真面目な顔で猿の親のように俺を抱いている。やせてきた月はまだ低く空気は冷えていて、俺は相棒の背後にある未明の空を見る。こちらを見下ろす顔の半分は月光にしらじらと照らされ、まるでそれ自体が発光しているように明るい。無風…