2009-04-01から1ヶ月間の記事一覧
顧客との商談のために宿に泊まった角都と飛段だったが、約束の時刻まで余裕を持って宿入りしたことが逆に災いした。商談前に角都は、帳簿の整理をしておいたり宿の新聞で相場を見たり汚れた体を清めたりしたかったのだ。風呂には入った。けれどもそこでひど…
背中を半分ぐらい切り下げられた。相手の武器はよく切れるノコギリみたいなやつで肩に食い込んだとき正直やべぇと思ったけど、あたり一面にマキビシが散らばってたし逃げるのも面倒くさかったんで、そのまま攻撃しようとしたらざっくりやられた。右腕が肩か…
4/25にコメントをくださった方へ。ありがとうございました。
未明、山犬の声で角都は浅い眠りから覚醒した。静かにあたりを満たす雨音の中、遠くから徐々に近づいてくる吠え声というより鳴き声と呼ぶ方がふさわしい、オオオキャァ、オオオキャァ、と尻上がりに叫ぶ声。今しがたまでの悪夢との境をはっきりさせるために…
相棒の破れた脇腹を繕っていたとき、その相棒がふいにニヤリとしてこちらの顔を覗きこんできた。角都テメー今ちょっとその気になったろ、さわり方がやらしかったぜオイ。無視して黙って縫い続けていると、相棒は急にバツが悪そうに横を向き、それでも小さな…
当初考えていたよりもしぶとかった忍び崩れを一人ひとり片づけ、最後の術者に角都が硬化した腕を飛ばしたとき、やはり他の忍びを屠ったばかりの飛段がまさにその相手を目がけて上空から飛び降りてきた。引くには勢いがつきすぎていた角都の手は、いきなりそ…
相棒が軽やかに鎌を振り回し身を翻すのを確認しながら角都は風遁と火遁を発動し、飛段の死角にあった数人を始末した。風で綯われた炎の縄をくぐって飛段は岩場を駆け昇り、飛び道具を霰のように浴びながら相手側の統率者を追いつめる。一段と大きな飛び道具…
4/20にコメントをくださった方へ。ありがとうございました。
そろそろハキダメも7ヵ月目を迎えます。テンション高いままこんなに続けられるとは正直思っていなかったんですが、まったく角飛パワー恐るべしです。 もともと読み専だった人間が、とにかく角飛を見たい、読みたい!という欲のままに自分でも書きだしたブロ…
真っ裸でトイレに入ることが褒められた真似ではないことは認めるが、自分の部屋でどのような格好をしていようと俺の勝手だろう。ところが遠慮を知らない相棒が仲間を連れて部屋に侵入してきたので、俺は出るに出られなくなった。奴らが出て行ってからと思っ…
「ああぶざまだ、けどどうしても!」の前夜の話。 角都は濃紺の夜空に深く息をつき、久しぶりの自由を静かに味わった。組織に属することを選んではいるが、やはり自分は単独行動が好きだ。価値観の異なる他人に干渉されることなく自分だけの時間を好きなよう…
4/17にコメントをくださった方へ。ありがとうございました。
安い作りの、一見していかがわしい宿の前でオレは相棒を呼び止めた。なぁ、ちょっと休んでいかねぇ?耳に入る自分の声が緊張していて、オレは肩を震わせる。まだ午後も早く宿泊には不自然な時刻、じらじらと照る太陽の下でオレの意図は隠しようもない(額に…
角都は逃げることを恥じない。三十六計逃げるに如かずと言うではないか、これは合理的な兵法だ。得るべき巻物も略奪したし、強力な術者が増援に来ているのが気配として感じられるなら、疲労した体で到着まで待つことはない。ただ、厄介なのはついさっき儀式…
どうでもよさそうなネタに食いついたのはオレだ。マジな話、A国で通り魔が20人を殺すと大ニュースなのにB国で500人が処刑されてもたいしたニュースにならないのは変じゃねーか。国益に影響があるからだと角都は言う。追悼心とニュースを一緒にするなとも言…
4/11にコメントをくださった方へ。ありがとうございました。
春のがさやぶの中で犬のやり方を真似ているとき、角都、てめー今までガキを作ったことはあんのか、とだしぬけに尋ねられたので、ついまともに考えた。長い年月の間、大勢の女が俺を通り過ぎていったし、同じ女と続けて関係を持ったこともある。偶然根づいた…
今日の相手が使った起爆札をうまく避けなかったオレに、相棒がいかにもジジイらしく、もっと危機回避能力を高めよ、というつまんない説教をした。もっと注意深くなれ、相手の動きを先回りして考えろ、爆音を聞いてからの反応では遅すぎる、衝撃波は音よりも…
4/7にコメントをくださった方へ。ありがとうございました。
雲の上を転がる大樽のように雷が鳴り響く。遅れてボトボトと大粒の雨。降る寸前にたどり着いた洞窟の口から、飛段が飽きずに暗い空を見上げている。生ぬるい季節に火を焚くこともなく、俺も苔むした岩に腰をおろして空を見る。馬の群れが走り抜ける音を立て…
田舎道での喧嘩で角都がオレの体をまっぷたつに引き裂いていたとき、がらがらと荷車を引いた男が曲がり道から現れた。間の悪い男は口をあけたまま立ち尽くしていたが、中途半端に引き裂かれているオレがじろじろ見んじゃねーよジジイと言うと、ヒョオッと変…
4/3にコメントを下さった方へ。ありがとうございました。
俺の相棒について、ときどき誤解をする輩がいる。可愛いだの健気だの無邪気だのとよくもまあそこまで勘違いできるものだ。容姿が少しばかり整っていることが影響しているのだろうか。なんと浅はかな。言っておくがアレほど愚かで下品で我儘な者もそうはいな…
今年は桜が早いらしい。だからゆうべ、明日は山道を行くぞと相棒が言った時、オレは、もしかしたら桜がわんさか咲いているところを角都と一緒に歩けるんじゃないか、そしてイイ雰囲気になっちゃったりして!とこっそり期待した。もしかしたら、というのは案…
機密窃盗に気づいた相手側の布陣は迅速だった。人道的な軍隊などというものがあり得るかどうかは別として、隊長は徳の高い人物らしく、まず住民をその地域で一番頑健な建造物である公会堂へ避難させた。俺たち相手に大きな戦闘をするつもりなのだろう。突破…