ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

壁に耳あり(ss)

こあん様のリク「譲り合い」による小話です。こあん様、リクをありがとうございます^^。



暗殺を請け負った角都と飛段は、標的の政治家宅に忍びこみ、いかにも忍者らしく天井にこしらえた穴から階下の様子を窺っていた。執務室ではでっぷりとした初老の男が秘書を相手に口述筆記の最中で、自殺に見せかけて殺すという目的のためにはその男が一人になるのを待つ必要があった。屋敷は昔造りの洋館で広々としていたが屋根裏はさすがに狭くて埃臭く、二人がうんざりし始めたころ、そこだけ明るい穴を覗いていた飛段が突然、お、と言い、続いてシッシッシと押し殺した笑い声を上げた。角都よ、殺しの依頼は誰から受けた?女房だ。短い答にふーんと飛段が反応する。なるほどな、見てみろよ角都、奴らおっぱじめやがったぜ。手招きされた角都が四つん這いになって穴に目を近づけると、なるほど、政治家がひょろひょろした眼鏡の青年秘書を大きな机に押し倒し、中途半端に服を脱がせているところだった。はー、とため息をつく角都の隣で飛段がそわそわとせっつく。なあどうなった、奴らヤってる?穴を譲ってやると、飛段は再びそれを覗いてキシキシと笑い続ける。あーこりゃしばらく続きそうだぜ角都、あいつもほんのちょっと長生きできるってわけだな。他人の情事が珍しいのか飛段は飽きずに階下を窺い、盛んに角都にもそれを見せようとする。角都も退屈しており、勧められるままに何度か穴を覗いたが、そうこうしているうちに無暗に腹が立ってきた。覗きをやめても声は聞こえてくるし、傍らでは相棒がまるで犬の格好でするときのように頭を床につけて尻を高く突き出している。この遅漏の税金泥棒め、と納税もしていないくせに角都は憤慨する。早く済ませろ、こっちまでおかしな気持ちになるではないか、まったく。