ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

自分の頭の蠅を追え(ss)



立ち飲み屋で角都が塩辛をつつきながら小言を言う。戦闘中はもっと集中しろ、今日のザマはなんだ簡単なトラップにまんまと引っかかりおって、俺を気にする暇があったら自分の足元を見ろ。カウンターに肘をつき焼き鳥をくちゃくちゃ噛む飛段が隣からすぐに応酬する。ハァー?テメーにだけは言われたくねぇな、しょっちゅう上を見ろだの下を見ろだのこっちを気にしてばっかなのはテメーだろ角都。うるさい黙れ飛段、出したくもない口を出す俺の身にもなれウスノロが。そのセリフはまんま返してやるぜ、大体夜に張り切りすぎんだよテメー、受けるこっちの身にもなれっつーの。その時、店先で男と女がいさかう声が聞こえてくる。角都も飛段もしばし黙って耳をすませるが、すぐに、フン痴話喧嘩か、犬も食わねえヤツだな、と頷きあって再び自分たちの世界に入っていく。他の客たちは慎み深く各々の分をわきまえて静かにしているが、飛段が、ああいうイチャイチャ喧嘩はどっかで二人っきりでやってほしいぜ、と言ったときには皆の頭がかすかに、しかしいっせいに揺れる。縦に。