ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

独語・押しかけ夜ガラス3(trash)

カラス話、じわじわ続きます。萌え要素がありませんが自分では楽しいv角飛ってなんて楽しいんでしょう。



<押しかけ夜ガラス3>


 夜中に押しかけてきた男はずっとガタガタやっていたが、朝方ようやく掃除をやめ、風呂を沸かし始めたようだった。多分体を洗ってから出て行くんだろう。そっとふすまを開けると、今までのゴミ屋敷が見違えるようにきれいになっている。おお、とオレは感動し、家の中を見て歩く。座敷、廊下、台所、便所と全部がすっきりぴかぴかしている。縁側のガラス戸まで。これなら一晩寝られなかったことをチャラにしてやってもいい。機嫌を直したオレは最後に脱衣所をのぞいてみた。そしたら裸の男がいた。こっちを向いて。立派な道具をぶら下げて。あわてて後ずさったが相手はまったく動じない。
「起きたか。ちょうどいい、お前も入れ」
「いやいやいやいや」
「この家に残った汚いものはお前の寝室とお前だけだ。寝室は今夜掃除する。お前は今洗う」
 男はなんなくオレをつかまえるとパンツを剥ぎ取り、風呂場に押し込んだ。オレの頭から湯をかけ、石鹸をつけたタオルで全身をこする。顔も竿も玉もおかまいなし。最後にまた頭から湯を浴びせ、しぼったタオルで暴力的に拭きあげる。苦行に耐えながらオレは相手を見た。いかにも女にもてそうなしぶいツラをしている。狂人なのがもったいない。しなやかな筋肉に覆われた体も同じくもったいない。ずいぶん鍛えてんじゃんと言うと男はバカにしたように鼻を鳴らした。
「野生動物はみんなこんなものだ。無駄に脂肪や筋肉をつけるのは人間ぐらいだろう」
 そう言って奴はさっさと自分の体を拭き、風呂場から出ていった。オレが出たときにはもうパンツをはいてシャツを羽織っており、ズボンをばさばささせていた。全部黒い服だ。パンツも。念が入ったことだなあと呆れているオレの前で、男は黒いコートを手に持ち、すたすたと玄関へ歩いて行く。
「稼ぎに行くが夕方には戻る。お前は洗濯をしておけ。布団も干せ。部屋を散らかしたら殺すぞ」
 ばさ、と黒コートを肩に掛けたとたん男はさっといなくなり、開け放した玄関からカラスが一羽飛んで行った。オレはその場でちょっとぼうっとしていたが、古いパンツをまたはくと玄関を閉め、布団に戻った。寝不足だから目もはっきりしないに違いない。考えなきゃならないことが山ほどあるが、とりあえず寝なくては。


→4