ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

独語・押しかけ夜ガラス4(trash)

いろいろ考えないで書き始めた話なので、今さら説明部分です。設定決めたあとで「あんなこと書かなきゃよかった」ってなるのわかってるんですが、やっぱり書かないと落ち着かないという…
昨日今日、次の土曜日にも仕事が入りまして、今年の五月はいったいどうしたんだ!とキーキー怒っております。超勤出ないから振休取らなきゃなんだけど、振休取ったら仕事が止まる…キーキー!



<押しかけ夜ガラス4>

 半年ほど前、自殺の名所へ死にに行ったことがある。木や木みたいな草がぼうぼうの山の中、小さなダムほどの沼があり、そこに落ちたものは浮いてこないという噂だった。死体がなければオレが死んだことに誰も気がつかないだろうし、そのうちオレが生きていたこともわからなくなる。死にたいというより消え失せたかったオレにはそこが理想的な場所に思えたのだ。
 沼のまわりには柵が巡らせてあって、「あぶない危険」と書かれたへんてこな札がそこらじゅうにぶら下がっていた。死ぬんだからどうでもよさそうなもんだが、それらの札がやかましくて気に入らず、手ごろな場所を探してぐるぐる歩いていたら、山道を上ってくる軽自動車が見えた。道端にとまった車から野球帽をかぶったじいさんが降りてきて沼の方へ歩いていったときには、オレはそいつが散歩にでも来たんだろうと思った。とても自然で慣れた様子だったから。じいさんが急ぎもせずに柵をくぐり、沼へ入っていったときも、何か釣りの仕掛けでも見に行ったんだろうと思っていた。
 あれが事故だったのか自殺だったのかはわからない。どっちにしろオレは気が削がれてそこを離れたが、なんだか気になって戻ってきてしまい、誰もいない沼を眺めてからじいさんの車を見に行った。キーは刺したまま、荷物も遺書もない。車に乗り、古ぼけたカーナビをつけ、自宅を選択するとナビが案内を開始したのでオレはそれに従った。じいさんの家には誰もいなかった。なのでオレが住むことにした。
 ときどき軽自動車で町まで下りてじいさんのタンス預金で食い物を仕入れ、ちょっと遊んだりすることもあるが、基本的には家で一人でごろごろしている。じいさんが相当な人嫌いだったのか、この家には誰もやってこない。町に住んでいたときのオレは何もかもが嫌で、世界を皆殺しにするか自分が消えるか考えつめ、まあ簡単な方を選んだんだが、この家に住んでから死ぬの殺すのとあまり考えなくなった。あれほど違和感のあった世界と折り合いをつけて生きているなんてなんだか変な感じだ。そうそう、最近ひょんなことから妙な居候が住みついているのだが、そいつの正体はカラスらしい。…もしかしたら自殺を中止して以来オレは狂っているのかもしれない。そんな気がしてきた。


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