ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

しょうがないからやっているまで(ss)


鎖が切れると飛段の鎌はとたんに扱いにくいものになる。飛段自身は頓着していないようだが、両手でつかんだ鎌を手放すことなく全身で振り回すのはかなりの重労働に違いない。角都がそれを思ったのは、半日に及ぶ戦闘の後に立ち寄った茶屋(戦闘が自分たちの日常の一部になっていることを実感するのはこのような時である)で、茶を飲む飛段を見たからである。手をガクガク震わせて茶をこぼし、ぅあちっ、と当然の感想を述べた飛段は慌てて茶碗を縁台に置き、今度は注意深く手に取ろうとしたそれを角都に取り上げられて、あっと間抜けな声を上げた。何だよオレんだぞ寄こせよと騒がれて、角都は一瞬自分がそれを飲んでしまおうか(こぼすなんて無駄はしない)と思うが、その後の面倒を考えて茶碗を相棒の口元へ近づける。とたんに相好を崩した飛段が、なになに飲ませてくれんのかよ、とこれまた騒々しくするので、その口に容赦なく茶を流し込む。慌てて嚥下する飛段を見ながら、角都はこんなことを楽しむ己をいまいましく思いつつ、店員に追加の茶を頼む。