ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

乙女かオレは(ss)



なんつーか角都はいつも同じなんだ。格好もそうだし立ち方も話し方もいつも同じ。太ったり痩せたりもしないしジジイのくせに白髪もシワも増えないし、だからオレは角都を不変のものと思って安心していたのだった。今日、オレたちは自分の胃液を武器として使う嫌なタイプの忍者とやりあった。服やら地面やらから立ちのぼる暴力的なにおいの中でようやく儀式を終えて身を起こしたオレは、遅いぞと唸る相棒にいつものように言い返そうとして、口をあけたまま相手を見つめてしまった。角都は反吐で汚れたコートを脱ぎ、頭巾とマスクも外していた。素顔の角都を見たことがないわけじゃない。けどそれを風呂や寝床以外で、つまり真昼間に見るとは思っていなかったオレにとって、これはとんだ不意打ちだった。ばらりと垂れた前髪を透かして角都が怪訝そうにこちらを見、酷薄そうな唇を開いて低い声でオレの名を呼ぶ。どうしたんだ、飛段。オレは仕込杖をつかみ、貫かれたまま跳ね上がる心臓を抑え込もうとする。うひゃあ、なんかオレ、今ちょっとだけ死ぬんじゃないかって思ったぜ、角都。