ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

換金できないもの(ss)



新聞に頭をつっこんでいる角都と飛段が交わした会話は、かいつまんで言えば以下の内容だった。�@なぜ角都は新聞の経済欄を毎日飽きずに読むのか。⇒儲ける機を逸しないためである。株価や為替レートの情報ほどスリリングな読み物はあまりない。�Aカブカとはなにか。⇒会社の価値を分割した額。株をうまく売り買いできれば金が増える。�Bカワセレートとはなにか。⇒種類の異なる金を交換する時の比率。外貨をうまく売り買いできれば金が増える。�C角都はカブやガイカを買っているのか。⇒否。経済が不安定である時に株や外為に手を出すのは博打に近い。�Dなのになぜ角都は新聞の経済欄を毎日飽きずに読むのか。非生産的なその時間を相棒との相互理解に振り向けるべきではないのか。⇒うるさい黙れ飛段殺すぞ。�Eそれをオレに言うか角都よ。これらの会話を通して飛段は「角都に構ってもらうには金の話が有効」を確認し、角都の方は「飛段を黙らせるには金や理屈ではなく力ずくで」を再認識する。欲しいものを既に手にしている者たちにとって、金などほんの手すさびの道具にすぎないのだった。