ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

泣いてなんかねーよ(ss)

「静かなるラジオ」「そして不在になる家で」の続きを読みたいと言ってくださった方へ。



路地からふっと現れた角都がフツーにこっちへ歩いてきて、ごく自然に、行くぞ、と言ったので、オレは一瞬ぽかんとしてしまって反応が遅れた。おい角都、どんだけ待たせたと思ってんだ、つーかどこ行ってたんだよテメー、ああ?!慌ててわめきながらもオレは急いで間違い探しをする。服、持ち物、におい。このまま相棒が戻らなかったらどうしようとイヤイヤ考えていたオレの心配なんかどこへやら、全部いつもの角都だ。オレはものすごくほっとしたけど同じぐらい腹も立った。行くぞじゃねーぞ、もっと他に何か言うことがあんだろがオイ!ギャンギャン吠えるオレを角都は見ていたが、こっちが一息つくと、お前はまったく元気だな、と呆れたように言った。さもバカにしたような口調にオレはカッとなり、目の高さにある角都の襟首をつかんで相手の背を質屋の壁に叩きつけた。けっこうマジで力をこめたのに角都は平気な顔をしている。こんな奴を心配していたなんてオレも大概アホウだ。自分よりでかい相手を威圧しようとオレは相手を壁に押し付けたまま、その顔に自分の顔を寄せてしかめっつらでギンギンに睨み、怒りの鼻息を吹きかけてやった。そうだオレは怒っているのだ、いくら角都がオレの背に腕をまわして抱き寄せてきてもオレは怒っている。ガキじゃねーんだから頭を撫でられても嬉しいわけがないだろう。睨むのをやめて角都の肩に顔を押しつけたのは顔同士が近すぎて目が疲れたからだし、体の力が抜けてしまうのは腹が減っているからだ。そうに違いない。