ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

疎外感(ss)



瓦礫の道を通ったとき、角都がなんだかのろついていたので、オレは盛大にバカにしてやったのだ。とうとう足元にきたな、歳は取りたくねーな。角都は黙っていたけどそれは珍しくなかったし、オレは気にもしなかった。ところが次の朝起きてみるといつも隣にいるはずの角都がいない。ションベンかと思ったけど気配がない。ものすっごくドキンとしてオレはきょろきょろとあたりを見た。しばらく探すと、野営地のそばの崖の上に、てん、と座る角都がいた。朝日に赤く照らされて小さな置きものみたいに見える。大声で呼ばわるとこっちを見たようだけど遠すぎてよくわからない。どうやら降りてこないみたいなのでオレが登って行こうとすると、来るな、と言う。なんでだよ。発熱した、はやり病かもしれない、しばらく近づくな。言いたいことはたくさんあった。どうせオレは死なねーのにとか、行くならひとこと言ってから行けよとか。けどそれを全部わかっていて角都はこうしたんだし、今さら何を言ってもそばには行けないんだってこともわかっていた。オレが寄って行ったら奴は逃げるだろうし、そしたら疲れて病気が悪くなるかもしれない。もう一回なんでだよと言うと、角都がちょっと困ったように、そんな声を出すな、と言った。奴も悲しいんだなと思ったけど気は楽にならなかった。オレはいやになるほど一人だった。