ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

罪がないとは言わないが、でもそいつは濡れ衣だ(ss)

※第三者視点です。



これをキメれば最高の気分になれる、アンタにならタダでわけてやるぜ。そう言うと隣で貧乏ゆすりをしていた男は怪訝そうにおれを見たが結局は乗ってきた。長い取引の待機中、いいかげん退屈していたのはおれだけじゃなかったわけだ。内心ほくそ笑みながらおれは錠剤を相手に手渡し、指示どおりに相手がそれを噛み砕くのを眺めていた。実にちょろい。クスリが効いてきて男が酩酊してくると、おれは相手をソファに押し倒し、服を探った。うちのボスの情報にどれだけ払う気か知らないが、こいつの相方はものすごい大金をアタッシュケースにぎっちり詰めて持ってきていたのだ。こいつだけが手ぶらとは思えない。しかし、コートやらズボンやら尻の後ろのギミックやらを探してみても何も見つからず、しつこく探りまわしているうちに、だんだん覚醒してきた男が手足をビクビク動かし始めた。急がないとヤバイ。諦めきれずに相手のズボンの中にまで手を入れてみたおれは、ラリった相手にいきなり抱きすくめられて小便をちびるほど驚いた。どちらかというと細身の男なのに力がやたら強く振りほどけない。ズボンの中の手もそのままだ。ひゃあ、な、なんかぐらぐらするぜぇオイ、と男が酔った声を上げる。大丈夫だから落ち着けと言ってやっても、おい手ェ離すなよ落っこちるゥ!などと騒ぎ続ける。唯一自由になる片手で男の口をふさぐと、おれは奴の耳元で諄々と諭した。怖くないからおとなしくしろ、大丈夫、じっとしていればすぐに良くなるから、な。取引を終えたボスとアタッシュケースの男が背後に立っていると知ったら、おれだってあんな言葉でなだめようとはしなかったのだが。