ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

貧乏神(ss)



小春日和のうららかな日のもとでも寒々しく見えるような、ひどく寂れた山村だった。やせた土地にはねじ曲がった灌木ばかりが生え、萎れたような農作物がぽつぽつと散らばっている。雨すら足りないのか土ぼこりが舞いたち、数軒の商店が立ち並ぶ通りを歩きながら飛段は咳きこんだ。超しけてんなーここ、ゴキブリも居つかなそーじゃん。失礼な言葉を言い放つ男に住民たちは無関心な視線を向けるばかりで、喧嘩も売れない飛段はさっきまでの「誰でもいいから屠ってやるぜ」オーラを引っ込め、忌々しげに地面に唾を吐く。けっ、どいつもこいつも腑抜けたツラしやがって、行こうぜ角都、こんなとこいても何にもならねーだろ。うむ、と角都は頷く。近隣では絶え間なく紛争が続くというのに、この村が侵略されることもなく細々と生きながらえている、その理由がわかったような気がする。彼らの神はどうしてなかなかのものだ、貧困を武器に死神まで退けるとは。



※さくま様からのリク「足りない」