ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

それは太古からの(ss)



家電屋の店先に人だかりがある。行き過ぎようとする角都の袖を引いて立ち止まった飛段は、いくつもの頭越しにウィンドウ内のテレビをのぞく。黒いパーカーのフードをすっぽりとかぶった男が車に乗せられる様子が映じられている。キャスターがわざとらしく興奮した声で実況する。全国に指名手配されていた××容疑者が簡易宿泊所に張り込んでいた警察官に緊急逮捕されました、所持品の携帯電話の画像データに乱暴される犠牲者の写真が残っていましたが、警察によるとこの時既に犠牲者は殺害されていた疑いがあるとのことです。行くぞ、と歩きだした相棒に引かれて家電屋を離れた飛段は、今の聞いたかァ角都、と大声で呼びかける。あいつも大概変なヤローだな、殺すのはわかるけどよォ死体とナニするなんてなァ、よっぽどテメーに自信がねーんだぜありゃ。ぺちゃくちゃうるさい相棒を無視して角都は足を速める。おいてきぼりの飛段は慌てて小走りになりながらさらに無神経な声を張り上げる。なんだよ角都ゥ、あっもしかしてあーゆーグロいの苦手?それが肯定できたらどんなにいいか、と角都は考える。つい昨夜のこと、角都は相棒を散々に抱きつぶし、死んだようになったその体をこれまた散々にもてあそんだばかりなのだった。妙に後ろめたい思いでつかつか歩く角都の背後から蹂躙された当の本人が、ゲハハァ可愛いなあ角都ちゃん大丈夫だよおめーのことはオレが守ってやるからよー、と的外れなことを叫んでくる。角都は耳を覆いたくなる。屍姦は大昔からのタブーだ、ということは大昔から途切れず続いてきた欲望ということだ。自分に自信が無いだと?人類は長い長い歴史の間ずっと己の性に劣等感を抱いてきたというのか、この俺を末裔として。ああ…。



※さくま様からのリク「理解したくない」