ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

数人で手早くできること、一人でゆっくりやりたいこと(ss)

5/19にいただいたリク「角飛+角都の分身」による小話です。角飛+角都の分身の不在、になってしまいました…すみませんm(__)mこれに懲りずにまたリクエストを恵んでくださいませ。



宿の部屋で、角都が五人に分身して金勘定をしている。飛段は不服である。金を数えたり帳面に数字を書いたりするぐらいなら飛段にだってできる(ちょっとぐらい間違えたって大したことはないはずだ、あんなにあるんだもんな、と飛段は考える)。一緒にやろうと手を出したところを邪魔するなと叱られて、飛段はふてくされる。おいおいカネなんかほっといてかかってこいよ、オレぁテメーの五人や六人まとめて面倒見られるぜぇ。舌を突き出して下品に挑発する飛段を無視し、角都は粛々と作業を進める。数人の角都が事務的に動くたび、サバサバと紙幣が鳴り、カッカッとペンが軋る。やがてやるべきことを終えた角都は分身を解いて一人に戻り、手を洗い清めると、コートを脱いで畳に胡坐をかく。座卓の向こうにはムッとした顔の飛段。角都は心持ち目を細めて相手を凝視する。あれをどう攻め落とそう、適当にやっつけてしまってはもったいない、せいぜい抵抗してもらって陥落させたらそれを堪能しなければ、そのために分身まで駆使して時間を確保したのだから。濃い一発を決めるぞ、と角都は相棒に負けず劣らず下品なことを考える。愚かな相方に量より質だということを教え込んでやろう。集中して、全力を尽くして。