ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

犬(ss)



戻りの遅い相棒を待つ角都は、宿の窓の下、深く落ち込んだような路地を見下ろす。配管だらけの狭い道を犬が歩いている。ロットワイラー犬のようだ。容姿が良いとは言えないが、ロットワイラーは獰猛で、かつては生きた金庫として現金を守る役割を担い重宝された犬でもあった。まるで俺だな、とひとり頷く角都の気配を感じ取ったのか、件の犬は窓を見上げ、縫い目だらけの男に唸ってみせる。申し分なく強そうで、少なくとも角都の相棒よりは頭の出来も良さそうだ。と、グルグル言っていた犬が急に頭を上げ、切られた短い尾を激しく振り、路地に入ってきた若い男に跳ねるように駆け寄っていったので角都は眉を上げる。あーテメーさっきの犬ころだな、もう遊んでる暇はねぇよ、わりーけど帰んな。両手を広げてそっけなく通り過ぎようとする飛段だが、まとわりつく大型犬に足を取られ、立ち止まった隙にコートの中へ相手の侵入を許す。コラ犬ころ、変なとこ舐めんじゃねーくすぐってぇだろが。笑う男に首をつかまれコートから引き出された犬は、ぽんぽんと頭を撫でられて嬉しそうに目を細め、舌を出して、自分より頭の悪そうな男をうっとりと見上げるが、残念なことに男はあっさりと犬をおいて建物へ入ってしまう。さて、室内で待ち構えていた角都は入ってきた相棒を押し倒すとさっそくコートに潜り込む。な、なんだァおい、と慌てる飛段はすぐさまズボンを下げられて変なところを舐められ、相手の首をつかんでコートから引き出すことができないままいろんなことをされる。やがてゆるく開きっぱなしになった股からようやく顔を上げた角都は、嬉しそうに目を細め、舌を出して、自分より頭の悪い男をうっとりと眺める。まあここまでは犬にもできる。人間のお楽しみはこれからだ。