ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

機を待つ(ss)



いつものでいこうぜと提案したのは飛段だ。角都も否やはなかった。抹殺の対象である忍の集団は各々の能力はそこそこだったが多勢であり、強靭な筋力と軽い体重という特質によって非常にすばやく動く者たちであったので、しらみつぶしにするにはかなりの手間暇がかかると思われたからである。相手の陣営にまず殴り込んだ飛段は派手に立ちまわった末に拘束された。暁の者を取り押さえたという情報はすぐに伝わり、広範囲に散開していた忍たちが集結し始める。四つの心臓と共に土中に潜み、五角形の包囲網を形作って陣地を取り囲んでいた角都は、攻撃の時機をはかるために地上に頭を出して対象の様子をうかがう。忍たちは捕虜を囲んで尋問中だ。規模からいってほとんどの者が揃っているように見受けられるが、角都は攻撃に移らず、地味な移動を繰り返して更に集団に接近する。鎌とコートを奪われて古風に縄で縛られた飛段は、全ての質問に、知るかよ、と答えている。うんざりしたような口調は演出ではないのだろうが、相手はそれを挑発と取ったのか、手にした棒を飛段の鼻先に突きだして脅しをかける。我々をなめるな、仲間の所在を吐けばよし、吐かねば生きて捕まったことを後悔する羽目になるぞ。知らねえっつってんだろ、あいつが今どこにいるかオレの方が知りてえよまったくもー。角都は更に時間を取り、相手が赤く焼けた鉄棒を飛段の乳首に押しあてるのを、珍しく飛段が苦悶の声を上げて身をよじるのを見届けてから一斉攻撃をかける。暴風と猛火の中で、テメー出んのおせーよわざとだろ!と飛段がわめいているが、角都は答えずに攻撃を繰り出す。もちろん飛段は正しいのだが、それは飛段が考えるような「ちょっとあいつを痛い目にあわせてやろう」的なものではなかった。先ほどの光景を提供してくれた男の首が角都につかまれ、ねじれてちぎれる。暗い愉悦はしっかりと味あわせてもらったが、それとこれとは話が別だったからだ。