ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

病膏肓に入る(ss)



飛段の体は損なわれたところをすばやく修復する。歯ですら例外ではないらしく、ろくに磨きもしないくせに飛段の歯は常に白くきっちりと並んでいる。歯を磨かなければならない角都が朝晩ゴシゴシやっているあいだ、飛段はいかにも暇そうにそのへんで待っているのだが、そんなある日、椿の一枝を折り取った飛段がその折れ口を咥えてゴショゴショやりだした。角都の真似らしい。角都はしばらくそれを横目で見ていたが、いきなり歯ブラシを持たない手を伸ばすと、パコンと音を立てて相棒の頭をひっぱたいた。イッテー、なんだよいったい!理由などない、むかついたから殴ったまでだ。ハァー?喧嘩売ってんのかテメーぶっ殺すぞ!枝を吐きだし鼻にしわを寄せて威嚇してくる飛段を角都はほっとして眺める。花枝で歯を磨いていた相棒があんまり可愛らしかったのでちょっと血迷ったのだ。落ちつけ、と角都は自分に言って聞かせる。ほらよく見てみろ、やっぱり妖精なんかじゃなかったじゃないか。