ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

回復期(ss)

※「からだと心のすべてをもって愛しているとまだ伝えていない」の続きです。



目の前が暗いのは真夜中だからか、それとも自分の視力がいかれたのか、と角都は訝った。油断してかかった目標が恐ろしいほどの使い手だったこと、経絡がずたずたに断たれた体でアジトまで帰りついたことは覚えている。その後も周りの声や物音に呼ばれ、瞬間的に覚醒したことは何度かあったが、そのたびに肉体の苦痛に圧倒されて意識が沈むのだった。今は誰に呼ばれたのでもなくひとりでに目が覚めたのだ。重く痺れた体は相変わらずだが気を失うほどの痛みはない。角都は片手を少し動かして敷布をなぞり、飛段を呼んだ。相棒がそばにいることを角都は疑わなかった。

おう、やっと起きたか。
暗いぞ。
暗くしてんだよ。刺激はテメーにゃ毒なんだとクソリーダーが言ってたぜ。さわんなって散々言われてよォ、チャクラの制御ができないからって。オレじゃなくてテメーが。
うるさい、とにかく何かつけろ。貴様の顔が見えんだろう。

ヒッヒッ、と飛段が言った。灯りはつかなかった。笑っているのではなく泣いているように聞こえたのはそのせいだったのかもしれない。