ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

ジャシン、一役買う(ss)



尾を下げて歩く犬を見た飛段が、ケツの穴をあんなに用心深く隠すたぁテメーそっくりだな、と相棒をからかったことから諍いを始めた二人は、続けて互いの性癖を罵り合い、下らないやり取りを大喧嘩へと発展させた。これが夜なら一晩寝れば仕切り直せるがあいにく今は真っ昼間だ。角都はうんざりしたようにため息をつくと相棒に背を向け、ざりっと地を鳴らして歩きだす。早く追って来い、と強く願いながら。一方、勝手にどこへでも行きやがれと怒鳴ったばかりの飛段は腕組みをして口元を強情に引き結び、しかし顔の皮一枚の内側では泣きべそをかきながら路上に立ち尽くしている。やり過ぎてしまった自覚はあるが、どうすればいいのかわからない。暁に所属していたときは互いを割り当てられたという縛りがあったが今はそれもなく、相手が行ってしまえばつながりは簡単に切れてしまう。逡巡の末、喉にからまるプライドを咳払いしてほどいた飛段は、おい角都、と相手を呼び止める。テメーオレと切れたら死ぬほど後悔するぜ、宗教はカネになるからな、わかってんのかコラ。振り向いた角都はしばらく続きを―具体的には謝罪や懇願を―待つが、相手の真っ赤な顔とへの字の唇を見ているうちに根負けし、わかった、と応えてやる。わかったからさっさと来い、時間を無駄にするな、バカが。さて、言い訳に使われたジャシンは神らしく上空からその様子を見下ろしている。前を行く白頭巾に愛弟子が駆け寄っていく。まるで犬だな、とジャシンは考える。そのまなざしの下では、さっきまでしょんぼりと垂れていた尾が勢いよく振られている。飛段の尾はあからさまに、角都の尾はややつつましく。