ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

独語・スケ1(trash)

新潟や福島ではまだ雨が降っているのでしょうか。大雨は昼間でも恐ろしいものですが、夜間、しかも停電まで起きているのでは、お住まいの方はまんじりともできないことでしょう。早く落ち着いてくれると良いのですが(>_<)
余震も多いですね。当方が住む地域もしょっちゅうユラユラしております。弱くとも、ドッ、と突き上げられるたびに体の中から針が飛び出してくるような感じがします。どうしても耐えられないのなら地震のない場所へ移住するしかないのでしょうかね。月とか…。

以前から「絵を描く角都とモデルの飛段」のパラレル話を書きたいと思いつつ、ちゃんと書く技量もネタもなくて妄想だけしていたんですが、なんだか吐き出さないと体に悪そうなので、独語でコソリと呟くことにしました。もしそれなりに片がついたらまとめてTEXTにでもあげますが、片がつかなかったらまたコソリと消しますね^^;


<スケッチ 1>

 文化センターの入口に立つホワイトボードに「本日のデッサン会場は五階」と書かれているのを見て、今日は脱衣のモデルだったか、と角都は思い当った。外からモデルを覗かれないよう会場を最上階に設定するのである。概してヌードモデルは冷房を嫌う。多分今日も窓を開け放して絵を描くことになるのだろう。うかつなことに、角都はジャケットの下に半袖のTシャツを着てきていた。いつも寒いほどに冷房が効いているので自衛が癖になっていたのだがこの暑さではジャケットを脱ぐことになりそうだ。縫い目だらけの角都の体を今さら気にする仲間はいないが、モデルは奇異の目を向けるだろう。
 一瞬逡巡したものの、角都は荷物を持ち直して階段を昇り始めた。せっかくの機会を逃すのは惜しかった。個人でヌードモデルを雇うことは案外難しい。素人には警戒されるしプロは料金が高い。
「エレベーターを使えばいいのによ」
 上から降ってきた声に角都は、ふん、と鼻を鳴らした。最上階の手すりごしに赤毛の男が角都を見下ろしている。人形作家のサソリだ。カルトンを抱えた角都が階段を昇り切ってみると、サソリは画材を持たず小さなカメラ一台を片手にぶら下げただけの軽装だった。角都はカメラにあごをしゃくり、いいのか、と尋ねた。
「モデルが嫌がるぞ」
「オーケーだとデイダラが言っていた。あいつの知り合いらしいから多少は無理がきくんだろう」
 角都は曖昧に頷いた。撮影が許されるのはまれだが、デイダラは皆にいいところを見せようとしたのかもしれない。デイダラは彫塑を得意としており、すでに自分の作風を持っていたが、それを他人に認めてもらおうとしてやっきになっていた。無理もなかった。デイダラはまだ若かった。
 部屋の出入口をぬるい外気が吹き抜けていく。サソリを残して室内へ入った角都は壁の明るさに目を細めた。陽光が室内に満ち、ベランダに面したサッシから風と熱気とデイダラの声が流れてくる。ときおり混じる聞き慣れない声はモデルのものだろう。男だ。
 室内には徐々に会員が集まりつつあった。好き勝手に場所を陣取り、何人かは談笑している。唯一の女性メンバーである小南が角都の隣にイーゼルを立て始める。会のまとめ役を務めるペインが焦がれるような視線を小南に送っている。近くに寄りたいのだが、ちょうどいい空きスペースがないのだ。かわいそうな奴だと思いながらも角都も場所を譲らない。ゲハハ、と笑う声がベランダから響く。
「おい飛段、こんなとこでよせって、うん」
「うるせーな、どこで脱いだって同じだろ」
「どんだけガキなんだよ」
 みなの視線につられて角都も振り返った。開け放されたガラス戸から入ってきた男は全裸で、両手を腰に当てて仁王立ちし、注目を浴びて明らかに喜んでいた。


→スケッチ2