ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

嗜好(ss)



宿の座卓の上に資料を広げて考えごとをしている最中、阿呆な相棒がひっきりなしに邪魔をするので、怒った俺は奴の両手足を背後でひとからげにした。浴衣の帯の長さが充分にあったので、残りは奴の口にぐるりと回して猿轡とし、端を再び両手足に絡める。逆海老に縛られた相棒はずっともがき続けた。相棒を縛るのに、俺は奴の浴衣の帯を使っていたので、当然のことながら相棒の姿はかなりとんでもないことになっていた。俺はあまりそちらを見ないように心がけた。明日の出立までに資料を読みこみ今後の策を練るつもりだったし、それにあくまでも大人しくさせるために縛ったのだし。あっ、ぐっ、と相棒が呻く。もがくたびに食い込む帯が、はだける浴衣が、相棒の姿をさらにあられもないものにしていく。じっと資料に向き合っていても俺の頭の中は座卓の前に転がる男のことでいっぱいだ。相手の頭があちらを向いている隙に俺はそわそわと興味の対象を凝視する。反り返る背中、甲斐なくばたつく脚、尻の間によれてはさまった浴衣地が急所をあやうく隠している。と、ようやく吐き出した猿轡を喉にずり落としてしまった相棒が、苦しげな喉声で俺を呼ぶ。かくず、なんとかしろ、こら。俺は煩悶する。何とかしてやるのも良し、このまま見ているのもまた良し、さてどうしたものか。