ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

泥棒猫・逃がした魚・鳶に油揚げ(ss)

※すばらしき角飛サイト「dd-more」のこあん様からいただいたリクによる小話です。三種のうちどれか、とのことでしたが、当方欲張りですので全部食べさせていただきました^^こあん様、すてきなリクエストを本当にありがとうございました!




<泥棒猫>
優れた忍びがおしなべてそうであるように、角都は眠りが浅い方である。対して、相棒の飛段は深く眠る方である。年寄りはそんなもんだろ、と飛段は悪意もなく言う。しゃーねーよテメー若く見えてもジジイなんだからなァ。ほぼ毎夜寝相の悪い相棒に殴られ蹴られて目を覚ます角都はムッとしながらも黙っている、というのは起こされた仕返しに眠りこける相棒の体に悪さをするのが角都の屈折した喜びの一つだからである。盗っていることにも盗られていることにも気づかない飛段と、どちらにも意識を研ぎ澄ませる角都。互いに別な者と組んでいたなら間違いなくその者たちが不幸な目にあったことだろう。これで良かったのである。


<逃がした魚>
賞金首を取り逃がした飛段が相手のことを「超」とか「ウルトラ」とか「スーパー」を連発しつつ説明をした。話によると、まるでその女は頭が三つと手足が十六本もある人外の生物のようであった。目から火を噴き口から酸を吐き散らし、剥がした爪を刃物のように飛ばしてくるという。逃がした魚は記憶の中でどんどん成長するものである。話にちりばめられた修飾語を取り除き、きちんと整理をして対応策を練った角都は、今度は自分一人でその女を捕えに行き、その結果、相棒は存外正直者で話をふくらませるタイプではなかったのだと思い知ることになった。悪いのは話を過小評価した自分なのだ。だがそれを認められない角都は賞金首相手に苦戦しながらも、あの野郎大げさなことを言いやがって、と毒づく。超ウルトラでかパイのGカップだと?せいぜいFというところだろうが。大嘘つきのコンコンチキめ!


<鳶に油揚げ>
ひとふねのたこ焼きを相棒と分け合って食べた角都は、相手の唇の端についたマヨネーズに気を取られる。相棒はそれに気づいていないらしい。角都はそれを指で取ってやろうと考え、次に、いや舐め取ってみたらどうだろう、と考える。自然に舐め取るのは難しい、やはり指を使うべきか、だがそれも相手がもぐもぐ口を動かしていては拭いにくい、相手が咀嚼を終えたタイミングでさりげなく手を伸ばすべきだな。真剣にそんな複雑な計算を組み立てている角都の前で、茶を運んできた老婆が、兄ちゃん汚れてるよ、と件のマヨネーズを手拭いで拭き取ってしまう。青のりだらけの歯をむき出して飛段が、おう、ありがとな、と礼を言う。角都は無言のままポイポイと残りのたこ焼きを全部口に放り込んでせめてもの意趣返しをする。こんなもので空虚な胸の内は埋まらないがないよりはマシだ。あーっと相棒が声を上げるが知ったことではない。あーっと声を上げたかったのは角都だって同じなのだ。