ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

独語・Co1(trash)

皆様こんにちは。今更ですが、この辺境ブログへおいでくださり、本当にありがとうございます。
さて、ネタが尽きるとパラレルへ逃げるさんぽやです。「異国へ行った角都とガイドの飛段」という思いつきネタだけで終わり方も決めておらず、いつちょん切れるかわからない話ですので、また独語でチョボチョボ呟こうと思います。
しかし寒い日が続きますね。雪国の方のご心配とご苦労は想像もできません。重さで発電する屋根があればいいのに、と毎年同じことを考えますが自分で考える頭はなく…。皆様、どうぞお体にお気をつけて。



<カンパニー 1>


 暗い店内の棚に角都は目を凝らした。さかんに話しかけてくる店主を無視して一台のカメラを手に取り、明るい窓際で傷みを調べる。無視された店主は気にするそぶりもなく角都の連れと言葉を交わして陽気に笑う。
「角都ゥ、いい加減に決めてメシ食いにいこーぜ、こいつも腹減ったってよォ」
 巻き上げノブを引き上げて裏ぶたを開く。外見は傷だらけだが、内部は思ったより状態が良い。パチャリ、と音を立ててふたを閉めた角都はファインダーを覗いてみる。電池は切れていたが機械式シャッターに切り替えて動作を確認する。
「交換用レンズはあるのか」
「ハァ?」
「広角レンズが必要だ。二十八ミリがあるかどうか聞け」
「こうかくって?」
「ワイドレンズ」
「なら最初っからそう言えばいーじゃねーか」
 角都は図体が大きな強面の男だ。両頬には縫い目もある。睨みつければ大抵の者は落ち着きを失う。なのに今朝会ったばかりのこの若造には睨みが通じない。自分はあまりに不利な立場にいる、と角都は苦々しく考える。この国の言葉を知らない角都が仕事を進めるためには確かに通訳が必要だ。都会ならば英語で事足りたろうが目的地は小さな町が点在する田舎であり、会社がやっと見つけた通訳兼ガイドがこの男なのだった。
 店主が棚から埃だらけの箱を下ろした。この国では何もかもが埃っぽい。角都は箱の中を漁って広角レンズを探し出した。何かにぶつけたのかレンズフードが歪んでいるが、レンズには傷も黴もない。もっともこう乾燥した土地では黴も生えないのかもしれない。角都はカメラボディとレンズを売り台へ置き、小さな帳面を出して店主へ差し出すと、いくらだ、と現地の言葉で尋ねた。オイオイまだかよー、と通訳が情けない声を出したが放っておく。値切りに通訳はいらない。数字は万国共通の言葉であり、角都はそれを操るのに長けていたのである。