ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

独語・Co2(trash)



<カンパニー 2>


バイクは過重積載のトラックの間を縫うように走り、やはりスピードを出し過ぎているトラックを見つけるとその背後にぴたりとついて追走した。道路は舗装されていて広い。鉄道が充実していないこの国では陸路が運送の要なのだ。しかし角都は気が気ではない。今日だけで事故現場を二か所も見た。無謀な運転が蔓延しているのだろう。目の前のトラックが事故を起こしたら、いや、急ブレーキをかけただけでもこのバイクはたやすく追突し、道路に投げ出された自分は後続車に次々と轢かれるに違いない。スピードを落とせ、と角都は怒鳴る。スピードを落とせ、おい!目の前でハンドルを握る通訳兼ガイド兼運転手がちらりと振りかえり、ハァ?なんだよ聞こえねーよ、とかなんとか言ったようだった。言葉はあっという間に吹き散らされ、角都の耳にはボウボウと風が鳴る音しか聞こえない。すぐ前のトラックの荷台から干草が飛んでくるが避けることもできず、角都は後生大事に腹に抱えていたカバンを背に回すと運転手の胴に腕を回してしがみつく。運転手の背が小刻みに震えている。この野郎笑っていやがる、と角都は怒りを燃やすが命は惜しい。路肩で脱輪しているトラックが一瞬見え、すぐ背後へ消える。文字通り過去は過ぎ去っていき、現在に留まるのに必死な角都を乗せたバイクは容赦なく疾走しつづける。先へ。さらに先へ。