ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

デート(ss)



俺と貴様でデートをするぞ、と角都が言った。その町へ入ってから角都の足がのろくなったので何か考えてやがるなとは思っていたんだが、唐突だ。オイ何を企んでると尋ねてもはかばかしい答は返ってこない。きっと何かカネ絡みなんだろう、偵察とか誰かの尾行とか。けどまあヒマだし、オレは角都につきあってでかい遊園地へ入った。鎌一式や角都のカバンはロッカーに預けた。武器がないと腰や腕がスースーして落ち着かない、と思っていたら角都がオレの腰を片手でつかんで体を寄せてきた。驚いたけど考えてみりゃデートのふりなんだ。おおラッキーとばかりにオレも奴にぴったりくっつき、遊園地の中をうろついた。乗り物にも乗ったしやたら騒がしいショーも見た。長い列にもたくさん並んだ。普通なら面倒くさいがデートなんだから全然平気だ。あれが食いたいそれが飲みたいとねだると角都が買ってくれる。ときどきこめかみをピクピクさせるが、デートなんだからオレはわがままを言い続け、でもちょっと悪いなって気もしたから買ってもらうたびに口布の上からチューをした。ジェットコースターの一番後ろに乗ったときだけ、角都からチューしてくれた。日が暮れて花火を見終えたころ、角都が、行くぞ、と促してきた。返してもらった鎌を背負って遊園地を出ると、そこはもう日常だ。それでも一日分の愉快がまだ体に残っていて顔が勝手にニヤニヤする。何したかったんだか知らねェがマジでデートみてーだったなァ、と言ってみたがすっかり不愛想に戻った角都は返事もせずに前だけ見て歩いていく。ところでテメーの用は済んだのか、と訊いたときだけ、うむ、と答えたから角都にとってもいい一日ではあったらしい。