ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

「ばあさんや、表に誰かいるようだ」「おじいさん、ただのホモですよホモ」(ss)




夕立に見舞われた角都と飛段はさびれた農家の軒下で雨宿りをする。ほこりくさい雨は蒸気となって地面から立ちのぼるが、じきに熱気は冷めてゆく。家のまわりには野百合が荒々しいほどに生えていて、灰色の濃淡の空の下で白く光る花を雨と風に揺らしている。飛段は自分より背の高い相棒の首に片腕を撒き、もう片手で相手の口布を下げるとできるだけ雄々しくキスをする。軽く済ませるつもりの角都が身を離すそぶりをするが、飛段は相手の頭を押さえてキスを続ける。錆びたトタンの屋根には樋がなく、したした、と雨だれが地面に落ちて小さな穴を作る。遠くで雷が鳴る。どこからか夕餉の匂いが漂ってくる。その間、気のないふうではあっても角都はわずかに身をかがめて飛段のしたいようにさせてやっている。こちらも雄々しく。