ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

べ、別に心が傷ついたりなんかしてないんだからねっ(ss)

角飛界の雄、こあん様からのリクエスト「往復ビンタ」による小話です。角都のセリフの一部は有名なアレですこあん様。すてきなお題をありがとうございましたヽ(^o^)丿



暑い暑いとやかましいぞ、そんなに暑いのなら寒い国の話をしてやろう。俺が里を抜けたばかりのときのことだが、その国の者は地下に穴を掘って住んでいた。獣のようだと?そのとおり、こと自然に関しては獣の方が判断が確かだからな。地下の住まいはそれぞれが通路でつながっていて、獣穴というよりは蟻の巣に近かった。なぜそんな場所に住みついていたかと言えば天然ガスが豊富に採れたからだし、滅ぼされたのも同じ理由、つまりは生きるも死ぬもカネが絡んでいたわけだ。恵まれた資源によって温かく明るく保たれていた居住区に比べ、凍てついた地上は常に薄暗く、草木も育たず、得るべきものが何一つなかった。地下から出ていく住民はいない。外気をじかに吸い込むと喉が凍ってしまうので、マスクなしでは呼吸すらできなかったのだ。俺は地下のガス井に起爆札をしかけ、同時に外気の取入制御装置を壊した。火に追われて上層階へ逃れた連中は外気にさらされ、体中に霜を針のようにはやし、立ったまま死んだ。面白かったのはな、住民の中でも差別を受けていた者たちは、きっと日頃から酷寒の地表近くに住まっていて耐性があったんだろう、粗末な防寒着を身に着けて外へ逃れて行ったのだ。もっとも奴らが生き延びられたかどうかは知らん、俺ですら凍傷になったほどだからな。奴らを滅ぼしておいて言うのもなんだが火と寒気の両方に挟まれるのはとんでもない体験だった。背は焼けているのに鼻先は凍る。普通の装備であんな酷寒の地に行くとは俺も相当な無茶をしたものだ。認めたくないものだな、自分自身の若さゆえの過ちというものを…。

せっかく昔語りをしてやったのに、かつての俺の身を案じもせず「ペラペラよくしゃべるなァてめー、ハァーあちーあちー」などとわめき、放屁までしでかした相棒を俺は殺した。死ねば暑さは感じまい。ふん。