ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

実は正攻法に弱い(ss)



隣を歩いていた飛段がふらりと寄ってきて俺の前に立ちはだかり、こちらの肩を両手でつかむといかにも悪人然としたニタニタ顔で見上げてきた。なあ角都、一時間、や、三十分でいいからオメーのこと好きにさせてくんね?そ、そのかわりオメーもオレのこと好きにしてくれてかまわねーからよォ。軽薄な顔と台詞だがぎこちない話し方が軽さを裏切る。暑さのせいか飛段はコートの前を全部開いており、見れば股間がふくれている。まだ昼前のそれなりに往来のある道中のことだ。こちらも軽くはぐらかそうとして、なんだ貴様まるで俺と愛し合いたいと言っているようだぞ、と返した俺は黙ったままの飛段の顔がみるみる赤くなるのを見てひそかに慌ててしまう。俺の心づもりでは「ハァ?なに言っちゃってんだよバーカ」「うるさい黙れ殺すぞ」「それをオレに言うかよ」という一連の流れが確定していたのに。どうにもいたたまれずあたりを見回すと道の向こうにたまたまそんな宿がある。しかたがないのでそこで奴と俺は互いを好きなようにした。三時間かかった。とんだ見込み違いだったがこんな日もある。