ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

なんか許せない(ss)



金勘定を邪魔する飛段に腹を立てた角都は分身を出し、相棒を静かにさせるよう命じた。多少手荒くしても構わんと言ってからちょっと後悔したが、痛い目に会わせるのもいい薬だと自分に言い聞かせて計算に専念することにした。分身は飛段を連れて隣室へ移動した。この隠れ家は安普請で音も筒抜けだ。壁の向こうからは飛段の不平不満がしばらく聞こえていたが、やがて静かになった。分身はきちんと役目を果たしたようだが、こう静かだと角都が落ち着かない。いっときもじっとしていない飛段をこんなに長時間黙らせておくとは分身はいったい何をしたのだろう。縊り殺したのか、あるいは縛り上げて口に何か詰め込んでいるのかもしれない、太くて硬い何かを。すっかり気もそぞろになった角都は数えていた金をほったらかして足早に隣室へ向かう。ドアを開くと部屋には布団が敷かれており、分身と飛段が寝転んでいるが、その様子に角都は息をのむ。布団をしっかり掛けた分身に飛段が添い寝し、ぱたぱたと掛布団を叩きながら寝かしつけているところだったのである。目を上げた飛段が、しっ、と唇に指をあてる。今寝たとこなんだ、うるさくすんなよ。ハァー?!裏返った声が角都の喉から飛び出してくる。なぁーにをやっとるんだ貴様ら!この!この!踏みつけられた布団の中で分身がポンと音を立てて消える。抗議の声を上げる飛段も二、三発殴られて頭を抱える。なんだよもーなんもしてねーだろバーカ!うるさい黙れ!と角都も怒鳴り返し、足音荒く先の部屋へ戻る。机の上には先ほど数えていた金。どかりと腰を下ろした角都は、ここなら安心だ、カネは人を驚かせたりしないからな、と考えて気持ちを静めようとする。やっぱり信じられるのはカネだけだ。それにしても、あーびっくりした。