ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

カラス・パロ(trash)

※松/原/始氏著の「カ/ラ/ス/の/教/科/書」を読んでおります。まだ途中なのですが、えらくカラス萌えしてしまったので、ちょっとそれを吐き出しておきます。おかしな点だらけの小話ですが、これは「教科書」ではなく私のせいですのでご容赦くださいm(__)m



 早朝、今日の稼ぎのために足早に公園を突っ切っていたとき、椎の根元にゴミが落ちているのが見えた。黒いビニール袋かと思い、調べてみようと近づいた俺はぎょっとして一瞬宙に飛んだ。ゴミが突然動いて口を開いたのである。
 ああーエサくれエサエサ、エサ。
 なんだ貴様。
 腹へって動けねえ、エサエサ、エサ。
 くちゃくちゃのそれはハシブトガラスだった。まだガキなのだろう、育ちきらない羽がそそけだってひどくみっともない。無視してもよかったのだが声をかけてしまったし、やたらガラガラとうるさいので、しかたがなく俺は喉にしまいこんでいた虫のかけらを吐き出して相手の口の中に落としてやった。奴は満足そうにくちばしを閉じ、赤みがかった丸い目を開いてこちらを見た。
 どーも、ついでにこれも頼むぜ。
 何がついでだと呆れて見ればビニール紐が奴の足に絡まっていた。紐は俺たち鳥類にとって忌避すべきものだ。翼に絡んだら飛べなくなるし、それは死に直結する。
 紐に近寄るなと教わらなかったのか。そんな格好でネコに見つかってみろ、死ぬぞ。
 説教はあとで聞くからさっさとほどいてくんねーかなァ。
 貴様の都合など知らんわ。
 なんだとてめー、と奴は気色ばんだが、プイと横を向くと再びゴミのように丸まった。空腹で喧嘩をする気が起きないのかもしれない。俺は少し迷ったが、結局くちばしを使って奴の紐をほどき始めた。縄張りに他のカラスがいるのはどうも落ち着かないし、誰かの死骸が転がっているのはもっと気に入らない。奴はけろりと機嫌を直し、ぺらぺらとしゃべりだした。おめー器用だな、ハシボソガラス?ボソってもっと小さくねえ?あーでもくちばし違うもんなァ、そーかーボソかァ、名前は?オレ飛段、あっちのビルに住んでんだけどよォ、ゆうべ風ひどかったろ、すっかりあおられちまって方向わかんなくなるし紐が絡むしでここで野宿してたんだよ一晩、腹減って大変だったぜ、で、おめーの名前は?かくず?へー、オレ飛段、よろしくな。
 頭が足りないらしいハシブトガラスは、自由になった足で何度か飛び跳ねると翼を広げた。こうして見るとなりだけは立派なカラスだ。
 いつかおめーが困ってたら助けてやるぜ。
 いらん世話だ、さっさと失せろ。
 ゲハハ、そう照れるなって角都よ。
 ばさばさと羽を整えて、じゃあな、と飛び立っていくハシブトガラスに俺は背を向ける。予定外の道草を食ってしまったが、俺はそもそも公園の隣にある飲み屋に向かっていたのだった。なかなかうまい料理を出す店で、しかもそこのゴミ箱にはふたがない。すでにその方角からガアガアと賑わうカラスの声が聞こえてくる。何が出ているのだろう、肉か魚か。先日のアンキモの味を反芻しつつ、出遅れを取り戻すべく俺は足を速めた。