ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

独語・押しかけ夜ガラス2(trash)

恩返話、今後どうなるかわからない二人ですが、ちょびちょび書き足していければと思います。
S様、リクエストをありがとうございました!題も勝手にいただきました(^^ゞウフフ…



<押しかけ夜ガラス2>

 自分はカラスだと名乗った男は、居間のまんなかに突っ立ってあたりを見回した。奴がまゆげの間に深くしわを寄せてギン!とにらむ先は、決まってゴミがたまっているところだ。ペットボトル、弁当のカラ、菓子の箱、雑誌、切れた電球、コンビニの袋、使ったティッシュ、外から飛んできた枯葉、わたぼこりなど。オレが、別にいーだろー誰にも迷惑かけてねーし、ともごもご言うと奴はゴミを見るのと同じ目でギン!とこっちをにらんだ。
「部屋の乱れは心の乱れだ。貴様本当にだらしのない奴だな」
「うるせーなァ気に入らねえってんなら出てけよ、てめーに指図されるいわれはねーぜ」
「貴様は俺の恩人だぞ、放ってはおけん」
「いやだからオレお前のこと知らねーし、って聞いてる?」
 奴はオレを無視してコートを脱ぎ、黒いシャツの袖をまくるとガツガツとゴミを拾い始めた。開け放した縁側で座布団を叩き、どこからか引っぱり出してきたホウキであたりを掃き、よれて落ちていたタオルを濡らしてきて雑巾がけをする。ゴミでふくらんだコンビニ袋がいくつも廊下に並び、投げてあったオレの服はハンガーにかかって鴨居からぶらさがった。この男は間違いなく狂っているが悪いことをしているわけじゃない、とオレは考えようとした。放っておこう。明日になれば奴もどこかへ帰っていくだろう。
 そっと襖をあけて寝床のある隣の間へ移動する。奴は掃除に夢中らしく追ってこない。よし、と布団にもぐりこんだオレは、しかしやかましすぎて眠れず、再び起き出して居間に戻った。今この家に住んでいるのはオレだ。ここではオレの意見が通るべきじゃないか。
「うるせくって寝られやしねえ、やめねーとぶっ殺すぞてめー!」
「プータローがいっぱしの口をきくな、昼間眠れ、どうせ暇だろう」
 オレは襖を勢いよく閉め、またまた布団にもぐりこんだ。情けないが今のオレにはこれが精いっぱいだ。狂人はオレよりでかくて強そうだったし、言っていることはオレよりはるかにまっとうだったからである。


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