ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

独語・押しかけ夜ガラス5(trash)

ブラを買いに行き、ふと思いついてティーンズ用のスポブラ買ったら気持ちがいい!胸?小さいよ!ハハハ!



<押しかけ夜ガラス5>


 オレの生活に入り込んできた居候は、本人がその気になれば人間にもカラスにもなれるらしい。カラスってそんな鳥だったのかと心底驚くと、奴は憐れむようにオレを見下ろし、恩返しだから特別なのだと言った。
「自然の摂理だ。命を助けられたカラスは自分を助けた相手と同じ姿になることが可能となる。そうしないと恩返しは難しいからな」
「ほかの鳥や獣もそうなのかよ」
「カラスのことしか知らん。お前また野菜を残しているな、食わんと殺すぞ」
 奴は自分の箸でオレのニンジンをつまむと、ぐい、とこちらに突き出してきた。初めのうちはぎょっとしたがこれがカラスの流儀なのだろう。ヒナのように口を開けるとツナにまみれたニンジンが入ってくる。ニンジンは苦手だ。でも味は悪くない。そう言うと居候は得意そうに眉を上げた。
「俺たちは料亭で舌を磨いているからな」
「料亭のゴミだろ」
「人間は不便な生き物だと思わんか、皿に盛りつけられていれば食えるがバケツに入ったものはだめだと言う。俺たちは気にしない。食い物は食い物だ」
 居候が来てから使われるようになった台所でオレたちはメシを食った。終わると居候が食器を洗い、オレは奴が入れた茶を飲んだ。と、居候がちらりと窓の外を見た。木の枝にとまったカラスが家の中をのぞいている。
「知り合いか」
「ああ。縄張りの巡回に行ってくる」
「なあ、考えたんだけどさ」
 ばさり、とコートを羽織ろうとする居候にオレは提案する。カラスからは人間の見分けがつくだろうが、人間から見たカラスはどれも同じだ。以前そう言って首か足にリボンを結んでくれと頼んだら危ないからダメだと断られた。それもそうだ。ならば名前はどうだろう。
「名前だと」
「カラスがうじゃうじゃいてもよ、オレがオメーの名前呼んでオメーがバサバサしてくれたら見分けがつくじゃん」
 好きにしろ、と奴は言った。なのでオレは沼にまっすぐ入って行ったじいさんの名前を奴につけた。表札に書かれていた名前で、読み方がわからなかったから適当に読んだ。ついでにオレの名も奴に教えた。
 こうしてオレたちは「カラスと人間」から「角都と飛段」になった。


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