ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

独語・押しかけ夜ガラス6(trash)



<押しかけ夜ガラス6>

 角都は金が好きだ。働くのも好きなんだと思う。いなくなったじいさんのタンス預金でオレが暮らしているのを知ると「それでは金が減る一方だろう」と怒り、町のスーパーマーケットで働き始めた。家では掃除洗濯炊事とよくこなし、カラスとしての縄張り巡回もする。帰ってくればオレとメシを食う。食った後は片付ける。そして風呂を沸かしてオレの背を流す。角都が野郎だということを除けばヒモと古風な妻みたいな暮らしだ。もっとも古風な妻は「また寝床に菓子をこぼしたな、殺すぞ」とは言わないだろうけど。「殺す」というのは奴の口癖らしくしょっちゅう言われているんだが、オレが自殺についてぽろりと口にしたらぴしゃりと怒られた。自分で死ぬのは許さないらしい。ケチな野郎だ。
 話がずれた。角都はほかにもキラキラ光るものが好きみたいだ。奴が私物を入れているダンボール箱をのぞくと、ビー玉とか小さな鏡とか金属の部品とか、とにかくキラキラした小さなものがためこまれている。しかも少しずつ増えている。あの渋面でこんなことをするなんてマジで笑えるが、なんだかかわいいような気もする。
 オレの暮らしは角都が来る前と変わらない。家がきれいになったりメシの質が上がったりしているが、オレ自身は前と同じにだらだらと過ごしている。まあ、少しは変化もある。うまく料理された野菜はそこそこ食えるようになったし、通勤する角都を送り迎えするうちに運転もていねいになった。あと、雨の日も好きになった。休みの日に雨が降れば、角都が家にいて退屈せずにすむから。


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