ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

霊峰(ss)

新宅においてますますお盛んのこあん様から「上昇気流」のリクエストをいただきました。すてきなお題だったのになんか変態ですみません。こあん様、本当にありがとうございました!



その山は離れたところから眺めれば美しかったが、中腹から上は草も生えぬ不毛の地で、浮石だらけの荒れた道は歩く者の足を傷めつけた。疲弊してきた飛段はきつい斜面をとぼとぼ登りながら不平をこぼした。日陰がない、疲れた、のどが乾いた、クソがしたい、暑い。何度もこの山を越えたことがある角都は相棒のへなちょこぶりに呆れてさっさと先へ進んだ。ふくれて座り込むかと思われた飛段は、意外なことにそれ以上文句を言わず、角都の後ろを遅れぬようによちよちとついてきた。飛段の目は、前を行く相棒に、正確には風をはらんでふくらむコートの中で動く相棒の臀部にじっと注がれていたのだが、そうと気づかない角都は若造の健気ながんばりを喜び、景色に見とれるふりをして歩く速度を落としてやった。いっそう強い風がふもとから吹き上げ、件のコートを傘のようにふくらませる。見ろ、いい眺めだろう、という相棒の言葉に飛段はかすれた声で、ああ、と返す。マジ絶景だぜ。