ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

他人ごとなら分析もできる(ss)



通された部屋の天井にはスプリンクラーがいくつも取り付けられていた。わざわざ趣味のために作ったのか、コンクリートの箱のような殺風景な部屋だ。男が手にしている刃物は幅広く長いわりに厚みが極端に薄く、びよよん、と間抜けな音を立ててしなったが、うまく振り抜くとすらりと空気に乗り、ほとんど抵抗なく飛段の腕を切り落とした。噴き出した血は血管の再生によってすぐに止まる。片腕を失った飛段はつまらなそうに立っている。新しい武器の試し切りをしたいという男の要望にこたえるためになだめすかして連れてきたが、パンツ一丁(服を襤褸にしないよう俺が脱がせた)で立つ姿は理解できない授業をやり過ごしているアカデミー生のようである。早く時間が過ぎないかとぼんやり考えている顔。一方刃物の持ち主は目を半分閉じ、びよびよ、と刃物を小刻みに鳴らす。穏健な容貌の下に、嗜虐に興奮するナマの欲望が見え隠れする。もう片方の腕、両脚、胴体、首をどのように落とすか、じっくりと考えているのだろう。俺は男に共感する。思い返すと吐き気がするぐらい自分を嫌う瞬間がこいつにもあったのではないか。俺はそうだった。