ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

カウンセラー(ss)



依頼人がうつうつとしている女だった。すぐに涙を流して黙りこむ。扱いづらいことはなはだしいが金持なので無下にもできない。高級ホテルの一室で俺は女の要求をまとめようとした。別れた男が憎いから殺してほしいということか。どちらでもいいなんてことがあるか、お前が決めなければ誰が決めるんだ。ならば殺さずにひどい目に合わせればいいんだな。おい、俺はお前が仕事を依頼すると言うからここに来たのだぞ、相談相手に来たんじゃない。何度も言うが、お前が何をしたいのか言え、でなければ何も始まらん。お前、その男に未練があるんじゃないか、だったらさっさとそいつによりを戻したいと言ってこい、振られたらその時こそ俺を呼べ、男を煮るなり焼くなり何でもしてやる。傷ついただと、貴様が泣こうが傷つこうが知ったことか。何をどうしたいのか決めたら改めて依頼しろ。バカ、貴様が自分で考えるんだ。わかったらさっさと出て行け、これ以上俺の時間を無駄にしたら殺すぞ。驚いたような間延びした顔で女が出て行くと、隣に座っていた相棒がケタケタ笑いだす。あーあ追い出しちゃったぜ、ここあいつが借りた部屋なのによ。うるさい黙れと怒鳴って立ち上がり、せっかくだからベッド使おうぜ、と阿呆な相棒が提案するのを無視してホテルを出る。冷たい風がコートの中を吹き抜ける。無駄足を踏んでしまった、簡単に金を手に入れられるはずだったのに。あの女は二度と仕事を依頼してこないだろう。なぜだかそんな気がする。