ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

誠意(ss)



角都が仕事の依頼主にクレームをつける。渡された情報の倍の勢力と戦ってきたのだぞ、報酬も倍でなければこちらの気がすまん。状況が説明と異なっていたことは認めるが、しかし、と依頼主は異を唱える。契約は契約だ、状況変化に関する追加支払いの義務は生じない、弁護士もそう言っている。法など知るか、俺たちは命の値段の話をしているんだ、貴様の言葉には誠意がない。そう言いながら角都は窓の外を指さす。北風がまっすぐに吹きつける路上で腕組みをした飛段がさも寒そうに背を丸めて足踏みをしている。あんな誰も見ていないところで立ったままいつ出てくるかわからん相棒を待つなんて貴様には無益なことに思えるだろう、だがあれが誠意というやつだ、行動でもカネでも誠意は見せなければ伝わらない、わかるか。いやいやそれは違うだろうと依頼主は考える。今日の稼ぎでスペアリブを食べに行ってもいいと相棒に言われて待ちきれずに勝手に外で待っている阿呆に誠意を見出せと言われても困る。だが賢明にもそれを口にはしない。