ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

消耗戦(TEXT)

くたびれています。短いです。



 囲まれている。相手は忍者で構成される中隊で、遠距離から術を放ってくる。角都の心臓たちが攻撃を繰り出し、それなりの成果を挙げているが、敵同様こちらも決定打を出すことができないでいる。
 飛段はまったく役立たずだ。鎌を振り回しても手応えなく、敵の正確な居場所もわからない。ひどく苛立って、いきなり現れる攻撃に翻弄されながら盛んに喚き散らしている。
「てめーら皆殺しにしてやる!ギッタギタのグチャグチャにして生まれてきたことを後悔させてやる!」
 敵は決して近寄ってこない。角都と飛段の攻略専門チームかもしれない。頭刻苦が森を焼き払い、圧害が煙を吹き飛ばす。死体が見えるが数は多くなさそうだ。ただ、視界が開けたおかげで術の痕跡を追いやすくなった、と角都は考える。飛段も同じことを考え、強力な術が発動するのを察知してそちらへ駆ける。回した鎌の軌跡に沿って空中に血しぶきが尾を引く。飛段はすぐ次へ跳ぶ。儀式をしている場合ではないことは本人もよくわかっている。
 しかしまだ数が多すぎる。隊の中心者も不明だし、罠を張っていた分、土地勘も敵の方に利がある。戦況は芳しくないが逃げ出す手立てがない以上戦い続けるしかない。
 こんな時に角都は妙なことを気にかけている。突然の戦闘開始に、今日は相棒といつもの掛け合いをしていない。突然せりあがった土遁の柱を打ち砕き、地中に潜んでいた術者を叩きつぶしながら、角都は気休めに「気をつけろ、死ぬぞ」と唱えてみる。

 角都も飛段もしぶとい。そのうち二人のどちらかが敵の本部を発見するだろう。そうしてそこの敵を倒すために再び戦う。勝つために。
 最後までここに居続けた者が勝つ。世界はいやになるほど単純だ。