ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

最初のとき(ss)

角都を蘇生させる飛段の話。




強風にあおられて耳殻がビィと鳴った。遠い山腹で木々が波のように揺れている。頭上で鳴き騒ぐカラスは、飛段が解体した死体の饗宴に仲間を呼んでいるのだろう。自然のあふれかえる雑音の中で飛段は耳に神経を集中させる。不慣れな作業の間、寒さで強張る指を死体の湯気を上げる内臓に突っ込んで暖を取ったが、それももう冷めてしまった。自分はうまくできたのだろうか?血でヌカヌカする手で相棒の手を握り、かすかな脈を探り当てても自信が持てない。横たわったままの相棒が、よくやったな飛段、と声をかけてくるまで不安はやむことがない。