ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

海沿いホテル(ss)

遠くでドーンドーンという音がするから、ありゃ戦闘か?と訊いたら、角都がちょっと驚いた顔をして海の音だと言った。今夜は情報屋に会うのに海沿いの宿に泊まるから楽しみにしておけとも言われたけど、海ってのはずいぶんやかましいもんなんだろうな、としか思わなかった。でも目の前にするとやっぱり違う。とにかく広い、明るい。水は青みがかった灰色で、角都のモジャモジャの色にちょっと似ている。いーじゃねーか海!とはしゃいでいたオレだが、宿の部屋を見てテンション下がっちまった。ホテルのシングルというものらしいがえらく狭くて風呂は小さいし、表の海とぜんぜん違う。しかも角都と別々だ。オレはぶーたれたけど、暁の決まりだからと角都は取り合ってくれない。しょうがないから一晩オレはおとなしくしていようと心に決めたのだ。なのに部屋のヤローが言うことを聞いてくれない。どのスイッチで電気がつくのかわからないし、せっけん箱みたいな湯船からあふれた湯はどんどん部屋の中に入ってくるし、廊下に出たら勝手にドアに鍵がかかるし。運悪く、というか運良くそこに打ち合わせを終えた角都がやってきて、オレはこっぴどく叱られた。その後、ホテルの奴らがこの部屋は今日は使えませんと言い、角都が謝って、オレは今角都の部屋にいる。部屋と同じくベッドも狭いけどオレは気にしない。やっぱり海の音ってけっこうやかましいよなと言ったら、それはお前だと返された。そりゃこんなふうに揺すぶられたら海だってオレだってやかましくなるってもんだろ、な?