ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

荒野にて(ss)



徒歩で移動をしていると、たいそう奇妙な風景に出くわすことがある。今、飛段の前にのっぺりと広がる無機的な大地はちょうど目の高さにある暗い地平線でちょん切られ、嘘のようにまっすぐなその線に沿ってやはり暗い雲がたなびいている。遠くにねじれた木が一本見える。一本だけだ。上空にはさらに黒い雲が垂れこめ、水に混じり込む染料のようにその根を地平へ下ろし始めている。現実感が希薄な風景に立つ相棒が、腕を肩の高さに上げて彼方を指し示し、何か言葉を口にする。無色彩の中で、赤と緑が飛段へ向いている。なんてこった、と飛段は考える。これじゃまるで世の中完璧みてーじゃねーか。