ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

深まる誤解(ss)



S級犯罪者が銭湯に行くなんて想像できるか?けれどオレたちは行った。新しく雨隠れにできた銭湯の入場券を、これまた新しくできた立ち食い蕎麦屋のオヤジが先着10人に配ったからだ。角都はまずそれを売ろうとしたがサービスチケットだから換金できないと言われて諦めた。けれど奴がものを無駄にすることはない。そんなこんなでオレたちはこんな早朝に熱い床の上に寝転がっている。ガンバンヨクというものらしい。カンバンヨクだったかもしれないが、まあどっちでも似たようなもんだろう。蒸し風呂ほどじゃないけどとにかく暑い。弱い火でジワジワ焙られる肉片になったような気がする。もともと暑いのは得意じゃないんだが、その上角都がのしかかってくるからオレはもうぐったりだ。動けないオレを角都は好き勝手に操作し、オレたちなんだかすごいアクロバティックなことになっている。オレは舌を出して喘ぐ。角都がその舌を舐めてくる。息ができなくてもがいているうちにいきなり苦行の果ての恍惚がやってくる。マジびっくりだ。みんなこんなことしていたのかガンバンヨクで。銭湯がこういう場所だなんてオレは知らなかった。なんて初心だったことだろう!