ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

喧嘩中(ss)



ざう、ざうという風雨の音で飛段は目覚め、掛け布団から頭を出した。部屋の中は薄暗いが、もう早朝ではないと体内時計が告げる。いつも容赦なくたたき起こすはずの相棒は窓辺に立ち、外を眺めている。その背中を飛段は横目で睨んだ。昨夜、豪雨の中たどりついたこの安宿で二人は諍い、角都は飛段を愚か者呼ばわりし、飛段も負けずに相手を罵った。互いに手を出さなかったのはそうするには疲れ過ぎていたからである。朝になったらテメーなんか見捨てて出てってやると怒鳴った飛段に対し、角都は好きにしろと答えた。そのそっけない口調を忘れはしないが、飛段はぐずぐずしている。出ていく気になれないのは自分のぺらぺらの布団に重ねて掛けられた別の布団のせいではなく、こんな昼近くなってから出て行くなんて格好がつかないように思われるからだ。それにどちらにせよこの天候では今日は宿から出られまい。