ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

そんな俺を形作るのも、俺に食われしものであり(ss)



目的地への道中、人肉を食べたことがあるかと訊かれたので、あると答えると、飛段はええーマジかよーと大仰に騒いだ。失礼な奴だ。この稼業ではそんなに珍しいことでもないだろうし、口からではないにしても俺の繊維を大量に摂取しているこいつに言われるのは更に心外である。ムッとしている俺に構わず、飛段は矢継ぎ早に質問を重ねる。いつ食った?なんで?どうやって?どんな味だ?俺は無視しようとした。極限状態の話など誰にとっても気持ちのいいものではない。しかしあまりにやいのやいのと煩いので聞き流すのも面倒臭くなり、俺は投げやりに答えた。彼らは俺の歯に噛まれて腹を満たし吸収されて俺を生かしつつ、いつしか俺自身となった、食われた者のことを俺は決して忘れはしないのだと。いかにも興味本位にニタニタしていた飛段はぽかんとし、みるみる表情を曇らせて道端に唾を吐くと不機嫌そうに、バッカじゃねーの、と呟いた。妬いているのかと揶揄すると真っ赤になって勘違いすんなバァーカ!と返してくる。その赤く染まった頬を眺め、俺はあらためて死者への不埒な感謝の念を噛みしめる。