ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

V.D(ss)



宗教から派生していつの間にか祭日のようになったその日も二人は普通に仕事をし、少なくない数の人間を殺した。夕暮れの斜陽の中、儀式を終えて地べたに座ったまま刃こぼれした鎌を見ていた飛段は、相手の荷を調べて戻ってきた角都へ金ぴかの鎖を投げて寄こした。鎌に引っかかってたけど売れるかそれ、売れんならやるよ。女の名が彫られたプレートがぶら下がる鎖を掌ではずませ、重さと輝きを見た角都は、安物だ、と言ってそれをぽいと投げ捨てた。焼けた地面には死体がごろごろしている。平等だな、と飛段は考えた。貧富の差にも恋人の有無にも関係なく死は訪れる。今日がバレンタインという男の命日ならその日に死がまつわるのも自然なことかもしれない。たったひとり死から見放されている飛段はあーあと伸びをして立ち上がり、やはり死から遠い相棒に歩み寄ってマスクを引き下ろすと気のないキスをした。返礼として角都もそっけなく呟く。ハッピーバレンタイン。