ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

愛のインフレ(ss)



金は裏切らないからな、と相棒に言われるたび、オレは体の奥のどこかが少しずつ傷つくような気がする。使わなきゃ意味ねーし使えば減るじゃねーか金なんか、と毒づいても角都は涼しい顔だ。運用すれば金は金を生む、頭さえ使えば金は減らん、怖いのはインフレぐらいだ。その自信たっぷりな口調が苦々しくてそっぽを向き、オレだって裏切ったりしねーよとかなんとか下らないことを口走らないよう自制する。そりゃオレもジャシン様が一番なんだから、角都の一番が金でもしょうがないとは思ってる。けどなんかおかしいじゃないか、オレばっかり角都のことを考えているっていうのは。前はオレだってもっとそっけなくしていられた。なのにいつからか、あーこれ見たら角都は喜ぶだろうなとかこの色は角都のあれに似てるなとかオレの世界が角都だらけになってしまった。これではバランスが悪すぎる。よって角都はもっとオレを構うべきである。導き出された結論にオレは一人で重々しく頷いた。しかしインフレってどんなものなんだろう。なんにせよ金に絡むことならろくなことじゃないに違いない。