ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

ズボン(ss)



他の何がなくともそれだけは欠かせない社会的アイテムであるズボンが見当たらない。宿を出るまで間があるとはいえ、落ち着かない角都は初めそれとなく探し、それから大っぴらに探し、しまいには相棒に疑いの目を向けた。以前こいつはぬけぬけと他人のパンツを身につけていたことがある。ズボンだって平気で穿くだろう。じろじろ見ていると相棒はなんだよテメーと頭の悪いチンピラそのものの反応をしたが、角都の視線の先を知るとほんのり頬を染めて朝からバッカじゃねーのと呟き、畳の上をいざって角都の傍へ移動してきた。引きずられたコートの尻の下からぺちゃんこに敷かれた件のズボンが現れてきたが、人肌に温まっているだろうそれをすぐに穿いたものか角都は迷っている。飛段の方はもうズボンを脱いでしまった。叱りつけて殴るのは少し後にしてもいいかもしれない。