ハキダメ

ダメ人間の妄想の掃き溜め

角都中心半径1m以内(ss)



角都はあまり所持品を増やさない性質で、アジトの自室には机と椅子と寝台ぐらいしか置いていない。なのに飛段はその机の角に太腿をぶつけては、そのたびにイテェイテェと騒ぐ。大げさな、と苦々しく思っていた角都だが、ぶつけた直後の太腿が血を滲ませて線状に青黒く腫れ上がっているのを目にした夜、机の置き場所を変えてみた。当初はうまくいったようだった。飛段は騒がず、角都も自分以外のものがつけた痣を見て苛立つことはなかったのである。ところが数日も経つとまた同じことが始まった。二たび机はずらされたが相変わらず飛段の太腿には痣が絶えない。角都にはわけがわからない。飛段はわざとやっているのだろうか、それとも目が悪いのか。視力ではなく、偏った範囲に設定されている飛段の動線が問題であることに気づかない角都は、頭をひねりながら今夜もガタガタと机を動かすのである。